「ピザのトッピング」と「天ぷら蕎麦」を例に「食品」に群が定義できるか?
自分の尊敬する技術者であるYusuke Saito氏が、先日Facebookで以下のようなことを呟かれてました。
これがピザの話かと思いきや群の話で、驚きもあったがめっさ面白い話だったのでご紹介w
※以下、引用文の記号や字の大小などは多少変更させていただきました。
まずは群の定義
結合法則
単位元の存在
逆元の存在
という3つの条件を満たすような、「集合と二項演算の組((集合, 演算)
と表したりします)」は群
となる。また、上記の条件の「1だけ満たすもの」を半群
、「1, 2両方満たすもの」をモノイド
と言う。
今回は、これらを確認していきます。
パイナップル on スパゲティ on ピザ
パイナップル on スパゲティ on ピザ の話。
食品に食品を on していっても、それは全体として食品になり、食品はonという演算について閉じていると言える。
(パイナップル on スパゲティ) on ピザ = パイナップル on (スパゲティ on ピザ) であり、他の食品でもこれは成り立つので、
(食品, on)
は半群をなすと言える。
上記ですが、食品
という集合の元として、パイナップル・スパゲティ・ピザが例として引き合いに出されています。
「そもそも食品という言葉の定義がされていない! パイナップルは食材で、他2つは料理でしょ!」というご指摘もあるかと思いますが、
今回はそこは目をつむっていただけると幸いです…
今回の演算on
の意味は、食品の上に食品を乗せる(重ねる)ですが、注意したいのはこの順番です。
明記されてはいませんが、以下となります。
集合食品
の任意の元A, Bに対し、
A on B → A / B(Bの上にAが乗っている状態)
となります(/(スラッシュ)
ですが、今回は分数ではないです)。
これは整数
という集合における+(加算)
と同じではありませんが性質は似ていますね。
食品の上に食品を乗せても食品、と言うのは上でSaito氏もおっしゃられています。
後は、演算on
の結合法則について見ると、
(パイナップル on スパゲティ) on ピザ → パイナップル / スパゲティ / ピザ パイナップル on (スパゲティ on ピザ) → パイナップル / スパゲティ / ピザ
となるため、=(イコール)
が成り立ちます。したがって、これは半群
と言えますね(゚∀゚)
無し
「トッピングは無しで」が言い方として認められる(「無し」をトッピングしている)ので、食品に「無し」を加えた拡張食品を考えると、
(拡張食品, on)
はモノイドになる。無し on ピザ = ピザ on 無し = ピザ
次に元無し
について触れられています。元無し
は、集合食品
に対する単位元
となるため、モノイド
と言えます(゚∀゚)
集合論で言うところの、空集合φ
ですね。
また、「トッピング」というのは、演算on
の別の言い方をしているだけで、on
のことです。
Saito氏は、集合食品
に、無し
という元を加えた集合を拡張食品
、とされましたが、
無し
そのものは食品とはいえないので、これを加えた集合を定義しないとモノイドにはなりません。
したがって、(拡張食品, on)
は群の3つの条件の1, 2は満たすので、モノイド
となります。
〇〇抜き
トッピングを外す方向のものとして、「◯◯抜きで」というものがあるが、これは自然な拡張とは言えない。
天ぷら抜き on 天ぷら on そば = そば
うん、どう見ても「天ぷら抜き on」は無理がある。そもそも「天ぷら抜き」そのものを食品と認めるのか。いやどう考えても食品ではない。それよりも何よりも、「天ぷら on 天ぷら抜き」は最後には天ぷらをのせてしまっているじゃないか。やはり自然な解釈として、「抜き」をそもそも別の演算であると考えるべきだ。
ということで、これは群にはならない。
今度は〇〇抜き
という言葉について、天ぷら蕎麦を例に言及されていますが、ちょっと曖昧な言葉の用い方をされているのかな、と思いました。
まず、見方によって結果が異なります。
◯◯抜き
を、
- 元とみる
- 演算としてみる
という2つの見方です。
▼「元としてみる」
◯◯抜き
を元として考えますが、これは集合拡張食品
の元として言えるか否かが、話の焦点になるかと思います。
論1
〇〇抜き
はトッピングといえる、「トッピング」は集合拡張食品
の元といえる。したがって三段論法から〇〇抜き
は集合拡張食品
の元と言える。
論2
〇〇抜き
は明らかに食品とは言えないので、集合拡張食品
の元とは言えない。
「論1」の場合、上記のSaito氏が言われている
天ぷら抜き on 天ぷら on そば = そば
という演算が成り立ちます。
この時「天ぷら抜き」は「天ぷら」の逆元
となります。さらに、無し
の逆元は無し
となるため、
集合拡張食品
には逆元の存在が定義できますので、(拡張食品, on)
は群となります。
「論2」の場合、上記の演算が成り立ちませんので、群とは言えません。(*1)
この話は、〇〇無し
でも同様です。
では単に抜き
という元を考えると、これは集合拡張食品
に存在し得るか?という疑問がわきますが、
さすがにこれは「食品」とはいえないため、抜き
も集合拡張食品
には存在し得ません。
▼「演算としてみる」
(拡張食品, 抜き)
という組み合わせですが、
① 天ぷら蕎麦 抜き 天ぷら 抜き そば = 無し ② パイナップル 抜き スパゲティ 抜き ピザ = ?
という2つの式を考えることができると思います。
①については成り立つかなと思いますのでこれは群となりそうですが、
②については流石に成り立ちません。したがって、(拡張食品, 抜き)
は群になりません。
終わりに
数学の話ですが、日常のもので考えると物凄く具体的でイメージしやすく、面白かった。 多少言葉遊びなきらいもありますが、こういう考え方を活かして教育に反映できれば良いなと思いました。 また数学で遊びたいものです♪
*1:逆元の定義ができるのであれば群となりますが、自分は定義できませんでした